「父親の力 母親の力」
著者は河合隼雄さん
「先生、理解のある両親を持つと、けっこう大変なんですよ」
臨床心理学者である著者の河合さんは、ある少年にこう言われたそうです。
「素直な感情のぶつかり合いがいかに大切であるか」がわかるお話を、本書から紹介させていただきます。
家族だからこそあるはずの感情のぶつかり合い
「父親の力 母親の力」の第5章「子どもにとっていい家庭とは?」から抜粋して紹介します。
普通の家庭の子が非行に走る
お小遣いはちゃんともらっている。
家で個室が与えられている。
家族そろってご飯を食べている。
そういう項目をあげると、ほとんどクリアしている至って普通の家庭。
そんな家庭からも非行に走る子はいます。
ではこの家庭に何が欠けていたかというと、それは家族だかこそあるはずの感情のぶつかり合い。
今の親たちは形式的な平和を求めすぎているように感じます。
波風が立たない家にしようとするから、家庭内がどんどん人工的になっていく。
みんな静かに、表面上はうまいこといっているように見えますが、子どもとしては感情の揺さぶりがないのはまるで物足りない。
「まあまあ」とか「いやいや」と、親から変に理解を持たれてしまうから、感情の高揚にふさわしい暴れ方ができないというわけです。
波風が立たないように振る舞っている、形式的に平和なだけの家庭には、”普通の”家庭にあるはずの感情のぶつかり合いがない。
子どもは親の素直な感情を知りたがっている
ちょっと成績が悪かったら、怒るのではなく「塾にいきなさい」「家庭教師をつけましょう」と、こういう対応をする親が多くなりました。
心の中では「こんな成績ではだめ!」と思っている。
それでも変にものわかりのいい親を演じてしまうのです。
「なんなんだこの成績は!」と言ってやったら本当の親子になるのに、そこをぐっとこらえて「次に期待する」などと言っていたら、心がどんどん冷たくなります。
家の中でおかしな辛抱をすると、余計に裏目に出てしまうんです。
子どもは親の素直な感情を知りたがっているのに、それを隠してしまうから、お父さんお母さんのことがわからなくなります。
だから子どもは「本当は親はどう思っているんだろう?」と疑問を持って、それを試す意味で、おかしなことをしたりするようになるのです。
本当は親がどう思っているのかを試したくて、子どもはおかしな行動をとる。
良い親を演じなくていい
良い親を演じて本心を隠すと、かえって裏目に出ます。
お父さんお母さんがどう思っているのか、ちゃんと伝わっていれば、子どもはおかしな行動をとらないものなのかもしれません。
そのために必要なのは、本音で感情をぶつけ合うこと。
親子の言い争いは、子どもがまっすぐ成長するために必要な栄養なのですね。
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